僕らのはなし。①


何とか、ビルを出るまでは頑張った。
けど、ビルを出て、階段を下りる途中で座り込んでしまった。


ホントは凄い恐かった。
得たいの知れない恐怖に脚もガクガクだった。

でも、それをあの人に悟られたくなくて、意地だったのかもしれない。


暫く、そこに座り込んで、いろんな事を考えていた。



「レスキュー隊です。
要救助者はどこ??」
急にそんな言葉が聞こえた。

隣を見てみると、いつの間に来たのか結城先輩が座ってた。

私が驚いてると先輩に急に腕を引かれ、連れてこられたのは何故か先輩の家で。

「えっと…何??」
「落ち込んでる時はこれ。
ホットケーキ。」
そう言って、先輩が指した机の上には、確かにホットケーキの材料が一式並んでる。

私はというと、机の前の椅子に座らされている。

「バターに小麦粉に卵に牛乳と砂糖にベーキングパウダーも忘れないようにしないと。」
そう言って、材料を手慣れた感じで混ぜ合わせると、温めたホットプレートで焼き出した。


それを見ながら、私達の出逢った頃の事を思い出した。

あの頃の私はまだそんなにこの人達とここまで関わるなんて思ってもみなくて、突然友達をかばって伊崎に睨まれて全校生徒の標的に。

たまたま逃げ込んだ屋上で会った先輩に、いきなりホットケーキの作り方聞かれたんだっけ。


何か追い詰められた気分だったけど、少しだけそんな事を思い出すだけで癒された。

先輩はあの時から私にとって支えだったのかな。




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