僕らのはなし。①
ー湊sideー
柚瑠は食後部屋に戻ってお風呂に入ると、直ぐに眠ってしまった。
疲れたみたい。
やる事もないので部屋を抜け出し、廊下を歩いてると…聴き覚えのあるギターのメロディーが聴こえてきた。
そっちに行ってみると、ロビーのソファーに座って結城先輩がギターを弾いていた。
何処か切なげなんだけど、癒されるメロディー。
静かに近づいて隣に座って暫く演奏を聴いてた。
先輩は私が来た時、一度こっちを見たけど、そのまま演奏を続けた。
「チケットは?」
演奏が終わると、先輩は手のひらを私の前に出してそう言った。
「ないから、また楽譜めくりしようと思ったんだけど楽譜なくて。」
「じゃあ1つだけ頼み聞いてくれる??」
私は先輩の言葉に首を傾げた。
『テラスに行ってるから、コーヒー買って持ってきてくれる??』
そう言われたので、指示通りコーヒーを買ってテラスに向かった。
「おい、時雨!
何だよ、こんなさみぃとこ呼び出して。」
「えっ、伊崎??」
でも何故か居たのは伊崎だった。
「何でお前が?」
「結城先輩に頼まれて。
まぁいっか。
はい。」
「さんきゅ。」
何となく、私達を引き合わせるよう呼び出した気がしたので伊崎にコーヒーを差し出した。
「綺麗だね。」
「だな。」
私達はテラスから見える夜景を眺めながらそう呟いた。