僕らのはなし。①
クシュッ
「ったく、寒いんだから上着来てこいよな。
風邪引くだろ?」
伊崎と夜景を眺めてると、やっぱり寒くて、ついくしゃみをしてしまった。
気づいた伊崎が呆れた顔をしながら、自分の着ていたダウンジャケットを脱いで私の肩にかけてくれた。
「いや、伊崎が寒くなっちゃうから良いよ。」
「良いから。
黙ってきてろ。
手もポケットに入れてちゃんと暖めろ。」
「ありがと。
あれっ?何か入ってる。」
一度断ったものの、お言葉に甘えて言われた通り腕を通して、ポケットに手を入れると何かが指先に当たった。
ガサゴソとそれを掴み取り取り出してみると…ネックレスだった。
「伊崎、入ってたよ。
何か女物っぽいけど、伊崎の?
はい。」
「鈍感…お前のだ。」
「…えっ、私?
何で??
私、今日誕生日とかじゃないけど??」
「良いからもらっとけ。
俺様直々にデザインした世界で1つのネックレスだ。」
「えっ、本当に??」
「嘘ついてどうすんだよ。
見ろ。
この丸い囲いが俺で、中の小さいけど綺麗な星がお前だ。
いつもお前を包んで守ってる。
裏に俺達のイニシャルも入ってる。
絶対に手離さないって意味だ。
ずっとつけてろ。
今度は絶対になくすなよ。」
「うん。」
頷いた後、視線が交わり自然とお互いに顔を近づけてキスしようとしていた。
…クシュッ
だけど今度は伊崎がくしゃみをしたのでそれは叶わなかった。
「もう。
格好つけるから。
はい。」
そう言って、着ていたダウンジャケットを脱いで伊崎の肩にかけた。
別に呆れたわけでもないんだけど、何かそういう決めきらない感じが私達らしくて。
少し素っ気なくそう言ったのは、照れ隠しでもあった。