僕らのはなし。①


何か良い匂い…。
温かくて、気持ち良いし。
私の身体を優しくほぐすような感覚…。
ここは、天国か何か??

んっ?ほぐす??
誰かが私の身体に触ってる??

だんだん意識がハッキリしてきて、目を開くと、白いワンピースのような制服のお姉さん達が私を囲むようにして、身体の腕や脚をマッサージしていた。

起き上がろうとしても押さえ込まれてされるがまま。
マッサージというより、高級なエステサロンの人達っぽい。

それからもあれよあれよと施術を受け、次はメイクされ、髪も巻いたりされ、高そうなドレスやアクセサリーやヒール類の一通りファッショングッズが揃った部屋でスタイリストさんのような人にいろんなドレスを着せられ、最終的に黒の腰がキュッと絞られていて、下がボリュームのあるドレスを着せられ納得したみたい。

で、只今ドラマやアニメに出てきそうな燕尾服を着たお年をちょっと召した白髪のおじいさんに連れられ、何か広い建物の豪華な廊下を歩いている。

「あの…ここは何処ですか??
ホテルか何かですか??」
メイドさん達が時々すれ違うものの、誰かの家にしては広過ぎるしで、そう聞いてみた。

「いえ、私がつかえる方のお宅でございます。
ある方がお待ちですよ。」
「あっ、えっとそれはどちら様で??」
「うちのぼっちゃまです。」
歩きながら聞いた私に、落ち着いた調子で話してくれる紳士っぽいおじいさん。

「あの…何かチラチラ見られてるような…。

自分の今の格好が合わないのかなんなのか知らないけど、通り過ぎるメイドさん達にチラチラと見られている事も気になる。


「はじめてぼっちゃまが女性をうちにご招待されたので、皆驚いているんですよ。」
「あの…そのぼっちゃまって…」
「着きました。
どうぞお入りください。
中でぼっちゃまがお待ちです。」
そう言って、有無を言わせぬ感じで中に通された。


ぼっちゃまって、誰…??
もしかして…結城先輩??


そんな事を思いながら、ゆっくりと中に進んでいくと、広い部屋…豪華な家具。
そして、大きな窓際に立つスラッとした背の高い男の人。

その人がゆっくり振り返った。





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