僕らのはなし。①
「はぁ?
アンタ、此処で何してんの??」
「自分の家に居て何が悪い??」
あんまりにも吃驚して、ついつい雑な質問を投げ掛けた私に特に気にせず答える伊崎。
「はぁ?此処が家なの??
てか、何考えてんの?
私を家に連れてくるなんて、どういう魂胆??」
「どういうって…もう済んだ。」
こんなでかい建物がコイツの家って事に驚きつつも、何で此処に私を来させたのか分からなくて聞いたら、ゆっくり近づいてきて覗き込むようにみると、納得したように頷いてそれだけ答えた。
「済んだって何??」
「よく見てみろよ。
自分でも驚きだろ?
地味な女でも、金かけて着飾れば変わる。
どうだ?嬉しいだろ??」
私の両肩に手を添えて、近くに置いてある全身鏡の前に身体を向けさせ、後ろに立つ伊崎はそう言った。
「嬉しいわけないでしょ?
いきなり連れてこられて、よく分かんないうちにこんな格好させられて。
分かってる?
相手の了解も得ずに連れ去るのは犯罪だから。」
後ろに振り返り、自分のした事をよく分かってないみたいなので、奴にそう言ってやった。
「素直に喜べないのか?
あぁ…天の邪鬼だったな。
んー。
じゃあ、もしお前が俺の言う事を聞くなら、2人きりの時は特別に話すのを許可してやる。」
「はぁ?
何言ってんの??」
「だから、俺の言う事を聞くなら、特別に恋人にしてやっても良いって事だ。」
私の反応で自分の話を理解してないと思ったのか、伊崎はそう言い直した。
「アンタ、頭大丈夫?
全然話し噛み合ってないんだけど。
あぁ…こんな時間無駄。
私、帰るから。」
一瞬本気でコイツの頭の中を心配したが、今この時が時間の無駄遣いだと思い直し、そう告げ、踵を返して部屋の出口へ向かう事にした。
「なぁ…このまま帰るのか?
お前にいくらかけたと思う??」
私を腕を掴み引き留めて、私の前に来ると奴はそう聞いてきた。
「はぁ?
興味ないから。」
「1億。」
「1億??
あんたバカなの??
何考えてんのか、全然意味分かんない。」
何故突然そんな考えに至ったのかも、今日みたいな強行の意味も分からなくて、そう言った。
「何って、さっき言っただろ??
俺と付き合えば、これよりも良い思いが出来る。」
「そんな事望んでない。
ハッキリ言うけど、アンタにそんな気持ち持ってない。
これからも、今まで通りで全然構わない。
お金で何でも手に入ると思わないで。」
私はそう言うと、今度こそ出ていこうとしたが、ある事に思い当たって後ろを振り返った。
「私の制服はどこ??」
「星野。
本当にお金で買えないものがあると思うか??」
「もう良い。
誰かに聞くから。」
私の質問には答えず、そう聞いてきた。
私は上手い答えが見つからず、どれもありきたりな気がしてそれだけ伝えると部屋から出てった。