僕らのはなし。①
その後、何とかお仕事中のメイドさんを1人捕まえて、制服を返してもらい着替えた。屋敷から出ようとウロウロとして、やっと出口を発見。
もう1秒でも早く出たくて早歩きで向かっていると、私が辿り着く前に先に扉が開き、周りに黒スーツの男の人を何人も従えた女の人が入ってきた。
凄い目立ちそうだけど、全然派手じゃなく品があって美人で…それでいて凄い冷たい瞳をしていた。
一瞬私を見たけど、直ぐに興味をなくしたかのように視線をそらし、中に入っていってしまった。
私も気にせず帰る事に。
「あっ、」
敷地内から出て歩いてる時、靴をまだ返してもらってない事に気づいた。
アクセサリー類やドレスは着替えた場所に綺麗にたたんで置いてきたけど。
「あぁ…ほんとどうしよう。」
そう言いながらも、このままアイツが用意させたヒールを履いて帰るのは嫌だったので、揃えてヒールを塀の前に置いて素足で歩き出した。
すると、大きなバイクが走ってきて、目の前で止まった。
不思議に思っていると、運転してた人がヘルメットを取った。
「あれ?先輩…。」
「また君か。」
「それはこっちのセリフ何ですけど…。」
まさかこんな時に、こんな状況で会いたくなかったので、小さく呟いた。
「で、ここで何してんの??」
バイクを止めると、近くの岩に座りながら、先輩が聞いてきた。
「あの…ちょっと事情がありまして。
もう帰ろうとしてたとこで。
先輩は??」
「俺も帰宅途中。
何で裸足??」
「ちょっとそうならざるを得ない事情がありまして…。」
「そう。何か会うたび大変な感じだね。
純にまた何かされた?」
「そう言えば、そうですね。
正解です。
急に連れてこられて気づいたらエステだの、ドレスだの…ほんと、アイツの頭の中どうなってんだか。」
「ふーん。」
「先輩…一つ聞いても良いですか??」
「何?」
「いくらお金を積んでも買えないものって、何ですか??」
不思議そうにこっちを見た先輩の目をまっすぐ見て聞いてみた。
「んー。」
「ありませんか?
…ないかな。」
「んー、……空気。」
「あぁ!確かに!!
そうですね!!空気だぁ!!
何で思い付かなかったんだろう。」
「フッ、君はほんと面白いな。」
そう言って笑って頭を撫でてきた。
凄いドキドキした。
私、顔赤くなってないかな??