僕らのはなし。①
「あの…」
私は1つ思い当たる事があって、2人に聞いても良いのか迷いながらも、そう声をかけた。
「ん?どうした??」
「何か聞きたい事がありそうだな。
何でも聞いて良いよ?お礼もかねて答えるよ。」
神崎さんが不思議そうに聞いてきたのに続いて、何かに思い当たったように四宮さんがそう言ってきた。
彼は本当に鋭いみたい。
「お礼??」
「そう。
最近、星野のお蔭で楽しいから。」
「はぁ…。
えっと、あの貴方達…結城先輩は葉月さんとお知り合いなんですか??」
どう聞けば良いのか迷いつつも、結局率直にずっと引っ掛かってた事を聞いてみた。
「「お知り合い??」」
「そんな浅いもんじゃないかな。」
「俺達4人と聖奈は幼馴染なんだ。」
「えっ、本当ですか??」
「うん。
まぁ、時雨はちょっと違うけど。」
「どういう意味ですか??」
「アイツの両親が事故で亡くなってるのは知ってると思うけど、アイツもその車に乗ってたんだ。
でも、自分だけ助かった。」
「そのショックからか、アイツは引き籠るようになったんだ。
聖奈がアイツを支え、寄り添い、外に連れ出したんだ。
だから、俺達にとってはただの幼馴染だけど、時雨にとっては母親のようであり、姉のようであり、初恋の人なんだ。」
神崎さんと四宮さんが順番に教えてくれた。
それを聞いた私の心の中は、胸の痛みと少しの納得だった。
彼は彼女の事をとても大切に想ってるみたいだったから。
その後、何でもないフリをして少し話をして、私は授業に出る為別れた。
「へぇー…そうなんだぁ。
彼女が王子様の相手って、かなり強敵だね。」
その日の夕方、バイトをしながら柚瑠に彼の事を話したら、少し苦笑いでそう言われた。
「強敵どころか、勝ち目すらないわよ。
葉月さんは私の憧れてる完璧な女性だもん。
てか、私も数日前に気づいたのによく分かったね。
私が先輩を好きだって。」
「分かりやすかったから。」
「…そんなに??」
「うん。
今まで湊から男の人の話って聞いた事ないわけじゃないけど、珍しいし…明らかに感じが違ったから。」
「そうなんだ。
何か恥ずかしいなぁ。」
「湊…相手がどうであれ、初めての気持ち大切にしなよね。
私はその恋の結末がどうであれ、応援してるから。」
「ありがとう。」
昔はよくからかわれて私の後ろに隠れてた柚瑠が、いつの間にか私よりもお姉さんになってて、何だかその言葉に心強く感じた。
今はこの気持ちをどうしたら良いのか分からない。
でも、逃げないで向き合おう。
それが私らしいと思うから。