僕らのはなし。①
「「いただきまーす。」」
花が今日のオススメランチを持ってくると、2人で手を合わせて食べ始めた。
「今日も湊のお弁当可愛いね。」
「ありがとう。」
「湊は大体はママのお弁当だよね?
自分で作ったり出来る??」
「作れるよ。
朝時間ないし、ママが張り切って作ってくれるからお任せしてるけど。」
「良いなぁ。
私は作れないんだよね。
お嫁にいけない。」
「自分で毎回作る気なの?」
「ううん。
多分、専属の料理人さんに普段は頼むだろうけど、やっぱり特別な時にくらい作ってあげられるようになりたいんだよね。」
「偉いね、花は。
多分この学園で料理作れるようになりたいなんて、花だけだよ??
皆、始めから料理を作ろうなんてさらさら思ってないし。
自分で作るなんて発想すらないんじゃないかな。
私はこの学園の人達を理解できないけど。」
私はまた花に感心しつつ、そう伝えた。
「えぇー、やっぱりたまには自分で作るべきだよ。
あっ、今度教えてくれない??」
「えっ、教えられるほど上手くないよ。」
「そうなの?
湊は器用だから得意だろうと思うけど。」
「そうかな?
ありがとう。
んー、じゃあ一度私の料理食べてみて判断して?
私で良ければ教えるから。」
「うん!ありがとう。
楽しみー!!」
そう言いながら花が手をあげた時、丁度テーブルの端に置いてあったオレンジジュースの入ったコップにあたり倒してしまった。
そこをたまたま通りかかった誰かのズボンと靴にジュースがかかってしまった。
「「あっ、」」
私達は2人同時にその人物の顔を見上げ、驚愕した。
「伊崎先輩!!
すみません、申し訳ありませんでした。」
花は即座に立ち上がり、頭を下げながら必死に謝った。
伊崎は冷めた目で一度ジュースのかかった部分を見ると、そのまま花にさらに冷たい視線を向けた。
「てめぇ、何やってくれてんだ?
謝って済むなら警察なんて要らねぇんだよ。」
「本当にすいません。」
涙目で花は謝っているが、伊崎の纏う空気は緩まない。
「何でもします。
クリーニング代もお支払いします。
代わりの服もご用意します。
許してください。」
「あぁっ、何様だてめぇ?
そんなんで済むわけねぇだろ。」
「じゃあ、どうすれば…。」
「おい、新。
ジュースくれ。」
伊崎は後ろにいた神崎にそう声をかけた。
完全に後ろに居る、SJのメンバーは口出しせずに事の成り行きを見守るつもりらしい。
寧ろ、面白がってる雰囲気すら窺える。
「はい。」
「サンキュー。」
そう言って、神崎が何処からか用意したトマトジュースのような赤い飲み物が入ったコップをお礼を言いながら受け取り、いきなり花の頭上へ持っていこうとした。
「ちょっと!!」
さすがにその流れをみていて花にぶっかけようとしたのに気づいて、寸でのところで花の前に立って伊崎の腕を掴んでとめた。