僕らのはなし。①
ー時雨sideー
週末の土曜日…今日から2日間宿泊学習があり、全学年の生徒達が空港に集まっている。
俺達4人は少し離れた場所で出発時間まで時間を潰しているんだけど、俺は別の事でソワソワしていた。
今日、遂に彼女…聖奈が帰ってくるから。
彼女といっても、ずっと俺の片想いなんだけど。
俺は聖奈を迎えて、それから参加だから少し遅れて行く。
「2人とも、少し落ち着けよ。」
「ソワソワして。
此方が落ち着かねぇ。」
ソワソワしてると、陣と新が急に少し大きめの声でそう言った。
気づくと、純も何かソワソワしてたらしい。
「で、時雨は大体わかるけど、純は何でソワソワしてんの??」
「誰か待ってんのか??」
「はっ、はぁ??
別に誰も待ってねぇ。
長時間のフライトに備えて準備運動してるだけだ。」
「でも、何で今回に限って専用機じゃないんだ??」
「いつもは嫌がるだろ?」
「深い意味はない。
そういう苦労もあとあと良い思い出になると思っただけだ。
なぁ?」
「えっ?」
純の言葉を聞いてなかったから、急にふられてまともな答えが出てこなかった。
それから、搭乗時間になったので、先に純達は目的地へ。
いつもなら専用機で行くんだけど、今回は何故か純が一般の航空機で行くと言い出した。
搭乗する時の少し残念そうな感じ…それが引っ掛かったけど、聖奈が帰国する時間が迫るにつれ、頭の隅に追いやられていった。
「あっ、葉月 聖奈!!」
聖奈が出てくるであろうゲートの前に移動して待ってると、近くにいた中学生くらいの男子達がそう叫んだ。
ゲートとは違う方向を見ながらそう言ってるから、何なのか気になって視線を向けてみると近くにあったポスターだった。
航空会社の宣伝ポスター。
彼女のモデルとしての人気を再認識して、遠く感じる。
人生の殆どを一緒に過ごしてきたのに。
今は誰より遠く感じる事がある。