僕らのはなし。①
ぼんやりとそんな事を感じていると、飛行機が到着したらしく、ゲートから人が続々と出てきた。
捜すが、なかなか出てこない。
時計を見て、合ってるか確認してまた出てくる人を見ていた。
殆ど出てったんじゃないか。
もうこの飛行機の便には乗ってなかったんじゃないかって思った時…サングラスをした一際目立つオーラを纏った長身の美女が出てきた。
聖奈…。
「あっ、葉月 聖奈さんですよね?」
「サインください!!」
「ファンです!!」
「握手してください。」
聖奈が俺に気付き、こっちに歩いて来ようとしていると、あっという間にファンに気づかれ囲まれてしまった。
嫌な顔一つ見せず、笑顔でそれに応じる聖奈。
それを見て、また距離を感じてしまう。
正直仕事やファンに聖奈を盗られてしまったような気になる。
仕事を始めてからよくそんな風に思う事があった。
俺の家族は居ないから。
初恋の相手であり、家族のような唯一無二な存在の聖奈。
でも、それを本人に言った事はない。
男として見てほしかったから。
「時雨ー!!」
そんな事を考えてるうちに、ファン対応が終わったらしく、聖奈が笑顔でこっちにやって来た。
しっかりと存在を確かめるように抱き締める。
「会いたかった。」
無意識に呟くようにそう言葉が出てきた。
「私も会いたかった。」
そう言って、聖奈が離れた。
それを少し寂しく感じる。
「また格好良くなったんじゃない??」
「聖奈こそ、更に綺麗になった。」
俺の顔を下から覗き込んで綺麗な笑顔でそう言う聖奈に、俺も正直に微笑んでそう伝えた。
「皆は??」
「先に行ってるよ。」
さっきまで俺だけを見てたのに、直ぐそんな風に別の人達が居ないのに気がいったようで、残念に思いながらも答える。
幼馴染相手に嫉妬なんてダサくて、聖奈には言えない。
「じゃあ後で会えるのね?」
「うん。」
「分かった。
時雨、お昼ご飯は??」
「まだ。」
そう言えば、聖奈が帰ってくるって事で頭がいっぱいで朝から何も食べてない。
「じゃあ先に何か食べに行きましょうか。」
「そうだね。」
聖奈が持ってたキャリーバッグを然り気無く聖奈から奪って転がしながら歩き始めると、聖奈も微笑みながら隣に並んで歩き出した。
車で移動して、空港近くのレストランに移動して、軽く食事をしながら話した。
「あっ、そう言えば、面白い子が居るんだ。」
「えっ、どんな子??」
「ピアノの才能があって、ズバズバと純に言えて、制裁命令出されても全然負けない。
かなり変わった子。」
何となく、彼女の事を話したくなって、思い出し笑いしながらそう話した。
「そう。」
「純にジャンピングして回し蹴りしたんだ。」
「ホントに?
凄い子ね。」
「うん。俺も吃驚した!!」
「フフッ…」
「んっ?」
「ううん。」
急に笑った聖奈を不思議に思って聞いてみたけど、特に答えなかった。