僕らのはなし。①
「よう。
偶然だな。」
お客様が続々と入ってくる気配と、誰かが私の前で止まる気配がした後、聞き覚えのある小憎たらしい低い声でそう言われた。
「はぁ?」
顔を上げて相手の顔を見た時、つい仕事中だという事も忘れ、大声をあげていた。
「何でアンタが此処に居るのよ??
宿泊学習で海外に行ったハズでしょ??」
「もう海外には死ぬほど行って飽き飽きしてた。
それで良いとこないかって聞いたら此処が良いらしいって。」
「何か嫌がらせにしか思えない。」
「湊ちゃん、そんな言い方しちゃダメよ?
お客様なんだから。」
「知り合いなの?」
私は伊崎に文句を言うのに必死で、気づかなかったけど、皆吃驚したらしく…麻実さんと柚瑠にそう聞かれた。
「認めたくないけど、ただの学校の先輩です…。」
「ただの??
この俺様に向かって…」
「お二人は何で止めてくれなかったんですか??」
「いや、純の性格はもう星野も大体知ってるだろ??」
「それにこんなに面白そうなんだから、止める理由もないし。」
私の言葉に気に入らなさそうに抗議しようとした伊崎の言葉を遮って、私は伊崎の後ろに居た四宮さんと神崎さんにそう言うと…神崎さんは全然申し訳なく思ってなさそうに、四宮さんはもう完全に悪巧みに成功したような楽しそうな感じでそう言われた。
「はぁ?」
「おい!俺の話を遮るな。」
「大して重要じゃないからよ。
…兎に角、こっちは仕事なんだから話し掛けて来ないで。」
「湊ちゃん!!」
さすがに私の言葉遣いというか、態度がヤバイと判断したのか、麻実さんが焦ったように呼んだ。
「大体分かったけど、少し落ち着いて。」
「案内誰か別の人にしてもらってください。」
「すいません。
じゃあ皆さんご案内致しますね。」
宥めるように言った柚瑠に続き、麻実さんも形式的に謝ってから、皆を案内する事に。
「はい。
お願いしまーす。」
「あとから、追加で来ますので宜しく。」
「庶民、しっかり働けよ。」
何かテンション高めに四宮さんが言った後、神崎さんが誰か来るらしい事を言って、伊崎は完全に私にムカつく笑みをこぼしながらそう言って案内係の人についてった。