僕らのはなし。①
「あらっ、こんなとこに居たの?」
「捜しちゃったじゃない。」
「てか、そんな格好で。」
「ドレスコードは守らなきゃ。」
「貴女達が言ったんじゃない。
そんな堅苦しいものじゃないからラフな格好で大丈夫だって。」
「はぁ?冗談に決まってるじゃない!!」
「本気にしないでよ。」
「これだから庶民は…。」
「人と違う事をして目立ちたいのは分かるけど。」
そう言って、彼女達は私を見下したように嘲笑した。
「ちょっと、何で私がこんな事されなきゃいけないの?
貴女達に何かした記憶なんて無いんだけど。」
出来る限り、怒鳴りたい気持ちを抑えつつ、そう話す。
「あんたの何もかもが気に入らないのよ。」
「SJの方達の周りをウロチョロと。」
「あんたみたいなのが近づいて良い方々じゃないのよ!!」
「消えなさいよ!!」
彼女達は逆に私の態度が気に入らなかったようで、段々口調を荒げながら近くにあった机の上から飲み物が入ったグラスを引っつかんでそう言って私にぶっかけた。
「ちょっ、何すんのよ!!」
「あらっ、ごめんなさい。
手が滑っちゃった。」
そう言って、笑いながら私を突き飛ばした。
「もう帰った方がいいんじゃない??」
「そうよね。」
全然悪びれた感じもなく、そう言って笑う彼女達に言葉も出ない。
ただただ唖然としていると、背後に誰かが立ち、フワッと肩に掛けられた。
それは、真っ白なスーツのジャケットで。
もう反対側からは私の濡れた髪を綺麗なハンカチで拭いてくれた。
自分の左右後ろを見れば、結城先輩と葉月さんがしゃがみこんでそうしてくれていた。
「人を嘲笑ってそんなに面白い??
気づいてないようだけど、貴女達自身の品を下げる事よ。
行きましょ。」
彼女達に冷たい視線を向け、少し低い声でそう言うと、優しく起き上がらせてくれた。
結城先輩も付き添うようについてきてくれたが、私達を部屋の前に送り届けると会場に戻っていった。