僕らのはなし。①
伊崎が一方的に決めた、何かよく分からない待ち合わせの日…私は通常の日曜と変わらずバイトをしていた。
まだ行くかは分からない。
決めてない。
大体アイツはいつも勝手過ぎる。
そんな急に決められても。
バイトは午後5時まで。
まぁ…間に合わないし、3時間も待ってるわけないし、気にしないで良いよね??
そういう決断に至って、私は仕事に没頭した。
けど、そんな満員御礼な店じゃないし、昔からの常連さんが長く利用してくれてる喫茶店だからそんな忙しくはない。
それなのに、他と変わらないくらいの時給をくれてるマスターにはほんとに感謝してる。
いろいろ無理聞いてもらってるしね。
流れるように時間が過ぎ、あがりの5時になった。
柚瑠も一緒にあがりだったので、着替えて外に出ると、雨が降っていた。
「あっ、雨…。」
「困ったなぁ。
湊、傘持ってる?
私持ってなくて…。」
「えっ、ちょっと待ってね。」
そう言って、覚えてなかったので背負ってたリュックを下ろし、中を探る。
すると、たまたま折り畳みの傘が2本入っていた。
多分こないだマコと出掛けた時に天気予報が雨だったから入れたままだったんだ。
まぁ、結局曇りだったから必要なかったんだけど。
「はい。
2本あったから、これ使って?」
「ありがとう。」
柚瑠に1本渡して、傘を開いて2人で並んで歩き始めた。
柚瑠が隣で話してるけど、私は空を見上げて少し不安になった。
「あのさ…柚瑠。
約束してないのに、この雨の中3時間以上も待つと思う?」
「えっ、何それ?」
「うん、ちょっと…。
で、どう思う??」
「まともな人は待たないんじゃない?」
「まともな人ならそうだよね。
あっ、でもアイツは普通の考えが通じない奴だ。 」
柚瑠の意見を聞いて納得したけど、それはアイツには当てはまらない事で…やっぱり心配になる。
「ごめん、柚瑠。
私、急用思い出したから先帰ってて。」
「えっ、ちょっと湊?」
やっぱり気になってとりあえず様子だけ見に行く事にした。
居なきゃ帰れば良いんだし。
引き留める柚瑠の声も聞かず、私は気づいたら無意識に走っていた。
待ち合わせ場所まで少し離れてたから、到着まで時間がかかった。