僕らのはなし。①
「えっ、伊崎!!」
その途中伊崎がフラつき、急にこっちに倒れてきた。
「ちょっと、何?」
「さすがにやばい。
寒い。」
警戒しながら聞いた私に、本当に震えながらそう呟いた。
どうやら、風邪を引いたらしい。
こんな夏前の暑くも寒くもない微妙な季節に。
私はとりあえず新聞紙を取り出し、そこに寝かせると着ていた薄手の上着をかけた。
「はい、これ飲んで。」
他に何かないか、リュックの中を漁ると、生理痛の時に飲む腹痛の薬が出てきたので、水の入ったペットボトルと一緒に渡す。
でも、まぁ頭痛も箱の症状のとこに書いてあるから良いよね。
「俺は主治医が処方した薬しか…」
「良いから黙って飲む。」
こんな状況でも意地張ろうとするので、遮って無理矢理飲ませた。
「いつもの黒スーツは?」
「帰した。」
「何で?」
「お前に合わせた。
庶民のデートを体験しようかと。」
「バカじゃない…。
何で帰らなかったの??」
「待ち合わせなんて初めてだから意地になった。」
伊崎にさっき聞きそびれた事を聞いてみると、そんな答えで…呆れもあるし、私の責任でもあるから怒るに怒れない。