僕らのはなし。①
「お前は何で来たんだ?」
「徒歩。」
「そうじゃねぇ。」
「分かってる。
何となく…雨が降ってたし待ってたら大変だと思って。」
ふざけてみたけど、本当はちゃんと質問の意味を理解していた。
だから、伊崎から目をそらしそれだけ言った。
「そうか。」
「うん。
でも、今日はごめん。」
「まぁ、良い。
お前は大丈夫か?」
「何が?」
「お前もちょっとは濡れただろ?
風邪とか大丈夫なのか??」
「うん。
庶民はわりと丈夫に出来てますから。」
照れ隠しにちょっと嫌みっぽい言葉を言ってしまう。
「なら良かった。
ふわぁ…。」
「寝てなよ。」
私の言葉に特に気にした風もなく頷いた後、眠そうに欠伸をしたのでそう促した。
とりあえずハンカチに水を溢さないように軽くかけて、伊崎の頭に乗せといた。
私も様子を見てるうちに眠くなって、気づいたら眠りに落ちていた。
翌朝…職員の人が来て、やっと出る事が出来た。
職員さんにもオーナーさんにも謝っておいた。
伊崎も睡眠をとった事でスッカリ体調も回復したみたいで良かった。
外に出て携帯が繋がるようになったので、伊崎は車を呼んだ。
「ほんとに送ってかなくて良いのか?」
車が直ぐに到着して、私も送ってくれるっていってくれたけど、それは断った。
「うん、その方が良いの。
連絡してないし、無断外泊の上に男に送られて帰ったら両親が卒倒しちゃう。」
「星野…夜も共にした事だし、責任取ってやろうか?」
急に顔を近づけそんな事を言ってきた伊崎の脚を蹴っ飛ばした。
「いってぇな!!」
「バカじゃないの!!
じゃあ気を付けてね。」
それだけ言うと、さっさと帰る事にした。
私達は気づいていなかった。
さっき伊崎が顔を近づけたところを撮られていたなんて…。