僕らのはなし。①


授業が終わって、今日はピアノのレッスンの日だったけど、早退した花の事が気になってたので、様子を見に行く事にした。


何回か行った事のある花の家に行くと、顔を覚えてくれてたみたいで、直ぐに開けてくれた。

門から家まで少し歩かなきゃ行けないくらい広いのはお金持ちの決まりなのかな?


「花、大丈夫?」
「ごめんね。
心配かけちゃったみたいで。
ちょっと貧血気味だっただけだからもう大丈夫。」
花は私がお見舞いに持ってった、以前距離を置いてた時に貰った録音出来るテディベアに、私が歌を吹き込んどいたのを聴きながらそう言った。


「そっか。
教室戻ったら居なかったからちょっと心配だったの。
ごめんね、置いてく形になっちゃって。」
「ううん。
湊。」
「ん?何??」
「伊崎先輩と…本当に付き合ってるの?」
「付き合ってるわけないじゃない。
写真だって、皆が思ってるのとは全然違うから。」
「でも、先輩は湊に気があるように思うんだけど。」
「冗談やめてよ。
今まであいつが私に何してきたか、花だって知ってるでしょ?
あり得ない。」
「ホントに??」
「うん。
だから、気にしないで。」
何かちょっと躊躇いがちだったので、怖いんだと思って安心させるようにそう言った。


「そっか!だよね。
良かった!!
何か大丈夫みたい。」
そう言うなり、立ち上がって腕を振ってみたりしている。

「ホントに大丈夫なの?」
「うん、平気!!
出掛けよっか?
クラブでも行こ!! 」
「でも、行った事ないよ?」
「大丈夫だから。
用意してくるから待ってて。」
そう言うなり、隣の洋服が置いてある部屋に行ってしまった。

急に元気になったのはよくわからないけど、とりあえず元気なら良いかとそんなに深く考えなかった。

後々後悔する事になる事も知らずに。



花の部屋の本棚をいろいろ見ていると、桜ノ宮幼稚舎の名前が刻まれたアルバムが置いてあった。


「だめー!!」
何か少し引っ掛かって、見てみようと取りだし開こうとすると、花が走ってやってきてそう叫びながらアルバムを奪った。


「何で勝手に見ようとするのよ!!」
「ごめん。」
「あっ、ごめんね。
怒鳴っちゃって。
ちょっと汚しちゃったから見られるの嫌だったの。」
「ほんとごめんね。」
湊も着替えて着替えて!!
服貸すから。」
自分が怒鳴った事に気づいて焦ったように謝って、私の背中を押してさっきまで自分が着替えてた部屋に連れてった。

さっきの花、今まで見た事ない顔してた。

不思議に思ったというか、一瞬凄い怖かったけど、気にしない事にした。







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