僕らのはなし。①
7.罠と信頼。
ー湊sideー
ちょっと今までにした事ないくらいのクラブファッションを花にコーディネートされ、有無を言わせず着せられた。
似合ってるのかな、これ?
少し気にしつつも、花に連れられてクラブへ。
花もいつもとは雰囲気が違う。
可愛いんだけど、何かいつもの清純系じゃなく派手め。
似合ってるけど。
まだまだ花と知り合って間もないから、知らない部分があるんだろうなぁ。
クラブ内は大きめの音楽がかかってて皆楽しそうに踊ったり話したりしてる。
でも、その雰囲気に馴染めなくて、私は隅の方に突っ立ってる。
花はというと、さっき誘ってくれたけど断ると、踊ってくると元気よくフロアの中央に行き、何かチャラそうな男の人と楽しそうに踊っている。
「はぁ。
トイレ行こう。」
何か居づらくて、息苦しい感じがしていたので、トイレに避難する事に。
楽しそうに踊っている男女の女の方に、後ろで踊っていた見知らぬ他人である女がぶつかった。
「痛ッ!」
「すいません。」
バッチーンッ!
不機嫌そうに呟いた女にぶつかった女性は謝ったが、彼女は許さず頬を平手打ちした。
「下手なダンスで醜態さらしてんじゃないわよ!
アンタみたいな不細工な面した奴がこんなとこ来てる事自体がもう公害なんだよ!!
早く失せな!!」
いつも彼女からは到底想像もつかない汚い物言いと綺麗だからこそ恐ろしい蔑んだ目だった。
女性は恐怖の表情を浮かべ、友人と早々に退散していった。
ちょっと私が外れた時にそんな騒動が起きてたなんて少しも知らず、私はこんな人が密集するような場所のトイレにずっと入ってる訳にもいかず…直ぐに出るはめに。
所在なさげにトボトボとさっきの場所に戻ろうとすると、壁にもたれさせて置いてあったギターケースに当たった。
「あっ、危ない!!」
咄嗟に何とかケースを支えて、床に突撃は防げた。
楽器は持ち主にとって、凄い大事なものだから。
「貴方のですか?
ごめんなさい。」
そばにある椅子に座っていた男の人に謝った。
「良いよ。
こっちこそ邪魔だったよね。」
見た感じ凄い好青年な雰囲気の何処かあの人に似た感じのする男の人はそう言った。
「そんな事ないです。
私が不注意だっただけで。」
「…ねぇ、少し出ない?
知り合いの付き添いで来たんだけど、息苦しくて。」
「私もそう思ってたので助かります。」
少しボーッとしていた私を見て、そう誘ってくれた。
私も同感なので、有り難くついていった。