僕らのはなし。①


梅雨も明け、7月の始め…花は何も言わずに転校していった。

私の机の上には、ポツンと一度貰ってお見舞いの時に渡したボイスレコーダー機能付きのあのテディベアが。

「湊…ホントにごめんね。
湊と過ごした日々は凄く楽しかったし、幸せだったのに。
今は許してなんて言えない。
でも、いつか…また出逢えたら良いな。
その時は、ちゃんともう一度友達になれるような人になっていたい。
さよなら。
元気でね。」
何気なく再生のボタンを押すと、そう吹き込んであった。


私も花と友達になれてよかった。
このお金持ち学校で考え方も育った環境も何もかも違う人達の中で、花がそばに居てくれて凄い心強かった。
いつかまた…出逢ったら笑って話せると良いね。
さよなら…花。



「お前ら、ラウンジに集まれ。」
ある日、放送でそう伊崎の招集がかかり、全校生徒が向かってるから、仕方なく私も行くと、伊崎に捕まった。

勿論、伊崎の後ろには四宮さんと神崎さんも居て、階段をのぼって皆が見渡せる場所に一緒に立つハメに。


「えっ、何??」
「お前ら、よく集まってくれた!!
今日は報告がある。
星野 湊が、俺の彼女になった。」
「はぁ?えっ、違っ」
「今後、コイツへの暴言は俺へのものとなる。
それを肝に命じろ。
良いな?」
私が否定するのも無視で、遮ってそう続けた。

悲鳴をあげる女子達、元気よく返事をした男子達と…反応は様々だ。


「おめでとうございます!!」
「おめでとう!!」
「サンキュー!!」
何か祝福ムードで四宮さん達も拍手しながらそう生徒達に続いてそう言ってる。

「違う!!聞いてないから。」
そう否定しても皆聞いてない。

「皆よろしくな。」
そう言って、肩に腕まで回してくる伊崎に、そこから抜けようとする私の軽い攻防も、皆にはイチャつきにしか見えてないみたい。


「異議あり。」
そんな時、そう言う聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。




「えっ、」
皆一斉にその声の人物を見る。


「ただいま。」
笑みを浮かべ、手を軽くあげてそう言ったのは…此処にいるはずのない結城先輩だった。



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