僕らのはなし。①


「ちょっと!!」
私はなんの迷いもなく、溜まり場に入っていき、真っ直ぐ伊崎のもとに行ってそう声をかけた。

「何だ?マジで来たのか??」
ソファに腰掛け、テレビゲームのレーシングゲームをしながら、そう言う伊崎。

「話があるんだけど。」
そう言っても、なかなかゲームをやめない伊崎にイラついて、テレビの前に立って画面が見えないようにした。

「邪魔だ。」
そう言って押し退けたから、テレビのコンセントを引き抜いた。


「何すんだよ!
折角新記録達成しそうだったんだぞ。」
そう言って、怒ってる伊崎に呆れながら、無視して話すことにした。

「ちょっと勝手に家具や家電を送ってくるのはやめてよね。
家にもちゃんと揃ってるんだから。」
「新品の方が良いだろ?」
「あのねぇ、そういう問題じゃないの。
古いものでも、ずっと使ってるからその分思い入れがあったりするの。
だから、新しいものポンポン買い与えれば良いってもんじゃないの。
まさかとは思うけど、家も買おうとしたんじゃないでしょうね?」
平然と言う伊崎に怒りよりも呆れが心を占めてくのを感じながら、ちゃんと話した。


「広い庭付きの家を買おうかとも思ったんだけど、それは秘書にとめられた。」
「当たり前でしょ?
前にもいったけど、人の気持ちはお金では買えないんだから。
てか、昔の女たちはそれで喜んだのかもしれないけど、一緒にしないで。
ムカつくから。」
最後の方はドスをきかせて言った。

だってホントにムカつくから。


「居ない。」
「何が?」
「今までに付き合った奴なんて居ない。」
視線をそらして、そう言った伊崎を見て、少しの喜びと戸惑いが出てくる。

「そっ、そう。
それなら今回は許してあげる。
今度やったら許さないから。」
「分かったよ。」
納得したのかは知らないけど、とりあえず頷いた伊崎に今回はこれで終わらせる事にした。



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