詐欺師の恋










気付けば、雨が降っていた。


動かなくなった男達を執拗に殴りつけ、流れる水を見てふと我に返る。


これじゃ、血が止まらないな、と思った。


掴んでいた相手の胸倉を放して、ふらふらと当ても無く歩き出す。





自分は、何の為に生きているんだろう。


何の為に、生まれたんだろう。


自分はここに居るのに、居場所は何処にもない。


そんなことはわかっていた。


なのに。



ここに居ない母親が、自分を縛り続けている。



顔すら、覚えていないのに。



だけど、死ぬ勇気も持ち合わせて居ない。



望まないのに生かされている。

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