詐欺師の恋
「…昨日、俺なんかヘマした?」
「いえっ!ちゃんとやりきってました!ケイさんは、その、中堀さんが連日仕事してるから、身体の心配をしてくれたんだと思いますっ」
抑えられているにも関わらず、私は首をふるふると振った。
「参ったなぁ…昨日の記憶、ほとんど、ない。」
「大丈夫ですって!ちゃんとやってましたから!」
「…俺、どうやって帰って来たの?」
「えっと、タクシーの運転手さんとメリッサさんに手伝ってもらって、タクシーに乗せて家まで来ましたっ。」
「車、、置いてきたんだ…で、そっからあんたひとりで俺を運んだの?」
「いえっ!ちゃんと歩いてくれて…えっと…それで…」
「それで?」
でこチューしました。
なんて、いえない。
黙っていると、首に当てられていた手が外されて、代わりに上を向かされる。
至近距離になった中堀さんの顔は、もう赤くない。