詐欺師の恋
「…それで?」




中堀さんはもう一度同じ質問をしてくる。



近い。



中堀さんの茶色の目。



出逢った頃よりも、少し長くなった金色の髪が触れそうになる。



いや、それよりも、両頬に中堀さんの手が触れている。




昨晩の滑り落ちた指の感触が、脳裏に過ぎり、自分の顔がかぁっと熱くなった。



もう、どうしろっていうの。




「でっ、でこ…」




いいや、ここまできたら言っちゃえ!




「でこ?」




「!」




不思議な顔をして訊き帰して来る中堀さんのせいで、どうやって息を吐けばいいのかわからなくなるわ、恥ずかしくなって決心が一瞬にして鈍るわで。






「でこ…ピンをして、、寝ました…」



「・・・・・」




撃沈。



いいよ、どうせ私はいつも肝心なこといえてないよ。



中堀さんの目にもきっとふざけた女にしか映ってないよ。






「なに、それ。俺がしたの?あんたがしたの?」




怪訝な顔をして追求する中堀さん。



あなた、最早鬼ですよ。


そこ、もう、訊かなくても良くない?
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