詐欺師の恋
「いけないっ」
すぐさま立ち上がって、慌ててキッチンへ。
「あーあ」
吹き零れたお鍋を見て、がっかりの声が出た。
周りを布巾で拭いて、小鍋に水を足す。
再び火にかけて、手の甲で額に触れた。
「びっくりしたなぁ…」
二度目のおでこのキス。
でも、昨晩のとは少し違う、悪戯っぽいキス。
中堀さんの素顔は直ぐに隠れてしまったようだけど。
なんか、新鮮だ。
こうやって少しずつ、中堀さんと知り合っていけたら。
案外、ゴールは近いのかもしれない。
私の片想いは、予想より早く、通じるかもしれない。
全ては、上手く行きそうな、そんな気がしていた。