詐欺師の恋
名前を呼んで
「あんた、いつ帰る?」
中堀さんが、そう訊ねたのは、お粥を食べ終わった後、私がお皿を洗っている時だった。
ソファの背もたれから、ひょこっと顔を出してキッチンにいる私に声を掛ける中堀さん、可愛すぎます。
「中堀さんが、この家にひとりでいられるようになったら、帰ります。」
ちょっとふざけて言ってみると、中堀さんが苦虫を噛み潰したような顔をした。
「…性格悪」
「!!!」
ショック。
好きな人から性格悪いとか言われるのって、ショック。
「大丈夫だよ、別に、クラブに泊まれるもん。」
もんって。
やめてよ、可愛すぎるよ。
ぶすくれた顔をしている中堀さんを見ながら、にやけていく口元を泡だらけの手で覆う。
「あんた、馬鹿だね。」
そんな私を冷めた目で見つめる中堀さん。
「なっ!にがっ!」
さすがに反論しようと口を開くと、洗剤の味がして文字通りの馬鹿者となった。