詐欺師の恋
「うえぇ」
痺れる舌と、泡のついた唇を蛇口ですすぐ。
「俺が訊きたかったのは、大晦日どーするかってこと。」
呆れたような声で、中堀さんがひとり、続ける。
「どーしゅるかって…べべべっ」
まだ洗剤の味がする。
流れる水とにらめっこしながら、中堀さんが何を言おうとしているのか考えてみるがわからない。
「カウントダウンパーティーは俺ひとりでやるから。来たかったらチケットあるけど?」
「!!!行くー!!」
一も二も無く飛びついた。
「うわ、ちょっと、口拭けよ」
水浸しのまま私は中堀さんの方へ行こうとしたのだが、至極迷惑そうな顔をされた。
傷つくんですけど。
いや、確かにびしょびしょの私も悪いですけどね。
だるまさんが転んだのごとく、ぴたりと止まった私は、口を尖らせて元の位置に戻り、タオルで口を拭った。
「わかった、チケットは後で渡すから。ちなみにルナと違ってこっちは再入場はないから、間違っても外に出るなよ?受付はケイだけじゃないからな。」
あ、そうだった。
中堀さんの言葉で思い出す。
「そういえば、訊きたかったんですけど、今のクラブの名前って何て読むんですか?」