詐欺師の恋
「うあ?」
グラ、と傾いた身体に。
しまった、と思っても時既に遅し。
「うわきゃぁぁぁっ!」
滑稽な悲鳴と共に、ダンボールが次々と落下。
―泣きたい。
なんで、私こんな夜中に引越しの手伝いしてるの!?
心の中で、うえーんと泣いた。
「あーあ。」
荷物の下敷きになって、動けないでいると、本能的に好きな声が頭上から響く。
でも呆れた声が混じっている。
「馬鹿だな。」
ついでに落とされた声には悪意も感じる。
ぽいぽいと私の上から荷物をどけてくれた彼は、予想通り、笑ってた。
「な、中堀…さん…あの、ですねぇ…」
腕を引っ張って立たせてくれることなく、私を見下ろしている彼を睨みつけつつ。
「おなかっ!空いたんです!!!!」
私は自分に起きる生理現象に負けて、泣いた。