詐欺師の恋
あんたさえ
自分に付けられた名前が嫌になったのは、いつからだったっけ。
周りの誰にも、当たり前にそれはあるのに。
自分には、無かったモノを手に入れて、少し嬉しく思った気もする。
『空生』
そう呼ばれて、自分のことだと認識できるようになるまで、時間が掛かった。
最初は、他の子供たちからのからかいもあったけど、そんなのは気にならなかったし、直ぐになくなった。
ああ、そういえば。
施設の他の職員が話しているのを、たまたま立ち聞きしてしまったことがあったっけ。
どんな風に、だったかは覚えていない。
でも、寒い季節だったのは確かだ。
『施設長には困ったもんだ。あの子を引き取りたい、なんてさ。』
『毛色が変わってるからじゃない?あんな何考えてるかわからない子、気持ち悪くないのかしら』
『中堀施設長、、人が良過ぎるのもなぁ。あんな子が息子ですなんて言ったら、世間から何言われるか』
『そうよ、もっと世間体とか立場を考えるべきだわ。金髪の子供なんて、猫じゃあるまいし。しかも血統書が最悪。』
悪意がある、会話だった。
俺はまさか、あの人が自分を引き取ろうとしてることなんて知らなくて。
でも、太陽みたいなあの人が。
俺のせいで、悪く言われてる。
なんだかそれがとても、残念で仕方なかった。