詐欺師の恋
会いたい、と思いながら。
行かなくては、と思いながら。
自分が傷つくのを恐れて、一歩踏み出せないで居た。
ぷっつりと途絶えた関係は、修復可能なのかどうか、わからなかった。
だけど、雪が降れば。
藤代くんと居ようが、誰と居ようが。
やっぱり貴方に会いたいと思う。
会って、問いかけたいと思う。
あの時、訊けなかった、『どうして?』を。
あの、日。
この、ドアを開けた場所から。
中堀さんの目に、私はどんな風に映っていたのかな。
何を思っていたのかな。
中堀さんの言葉を、『やっぱりか』と受け止めた自分は、間違っていたのかな。
私は中堀さんじゃなきゃ嫌だけど。
でも、もしも。
貴方の傷が癒えたのなら。
私が本当に必要じゃなくなったのなら。
きちんと、さよならを言わないと。
私からも、貴方にさよならを。
そして。
―もう、一人でも、眠れますか、と。
確かめなくては。
貴方が頷いたなら。
強がりや嘘を吐かずに、頷いてくれたら。
その時は、笑って、別れられるようにしたい。