詐欺師の恋
バタバタバタバタバタ
「!?」
暫くすると、裏口が俄かに騒がしくなり、何者かが近づいてくる足音がはっきりと聞こえた。
その勢いの強さに、思わず少し、後ずさりした。
ガチャッ、バン!!!
「カノン!」
予想通り勢い良くドアが開いた先には―開きすぎたせいでドアが壁に激突してめり込んでいるがそれはこの際気にしないことにして―こちらも予想通り、メリッサが、息を切らして私を見ていた。
「め、メリッサ…」
「はぁー!!良かった!!!カノンにもう二度と会えないかと思ってたから!!連絡先も訊いてなかったし!」
出てきたメリッサは私の両手を掴み、ブンブンと振り回す。
「とにかく!ちょっと、中入って!お茶でもしてかない?!」
「え、は、いや、あの…お邪魔じゃないですか…」
気遣いを示せば、メリッサの碧の瞳が不服そうに細められた。
「はぁー??邪魔なわけないでしょ?あぁー!!相変わらずカノンは日本人かぶれね!煮え切らない!!!!誘われたんだから、YesかNoのどちらかしかないでしょうよ!!!」
かぶれって…。
私、生粋の日本人なんですけどとは思うものの。
メリッサと話していると、全てどうでもよくなってくる。
「あ、じゃ、Yesで、お願いします…」
素直に頭を下げると。
「はーい、決まり!!!」
私が言い終わらない内に、メリッサは掴んだままの私の手をぐいぐいと引っ張り、裏口から中に引き入れた。