詐欺師の恋
「きゃぁー、零がいるー!!!!」
スタッフルームから降りてきた葉月が、うーんと伸びをした所で空生に気付き、奇声を上げた。
「…葉月、うるさいよ。」
「邪魔っ、どいてっ!」
「うぉっ!」
燈真の制止も聞かずに、葉月は俺を突き飛ばし、空生の隣に座り、抱きついた。
「っ、あっぶねぇーな!もう少しで落とす所だったじゃねーか!」
なんとかバランスを保ち、死守した酒瓶を片手に抗議するも、葉月は俺を見事に無視する。
「ねぇねぇ!何飲む???何か作ってあげる!」
「…もう、飲んでる。」
きゃいきゃいとご主人様の機嫌も知らずに尻尾を振る馬鹿犬、葉月。
俺は、むかついて、酒瓶をカウンターに置くと、思い切り葉月の座っているスツールを回す。
「きゃぁ!!!!」
ぐるん、と上手に回転したおかげで、葉月は掴んでいた空生の腕から引き剥がされた。
そのせいで空生のバランスも少し崩れる。
「ちょっと、崇…」
「こんの鶏冠野郎!!!!」
燈真が呆れたように仲裁に入ろうとした途端葉月が頬をふぐのように膨らませて俺に猛抗議。