詐欺師の恋
メリッサと会ってから、藤代くんに事実を確認したいと願いながらも、何故だかすれ違いが多く、2人で話す機会に恵まれない。



よく思い返してみれば、タカと会ったあの夜の次の日も、藤代くんはよそよそしかった。




藤代くんは何かを隠していると思うんだけれど、それが何で、そうすることによってどんなメリットがあるというのか。




そんなことを考えている間に、なんと藤代くんが部署を異動になった。




何でも新しいプロジェクトの立ち上げメンバーの一人だそうで、大抜擢らしい。





「どうして…時間は加速するんだろう…」





漸く写真と鍵から目を外し、コートのボタンを外しながら、私は呟く。




子供の頃は時間の流れが遅くて仕方なかった。


大人になった今は、時間だけが飛ぶように流れていって、自分の心だけ置いてけぼりになっているような気分だ。





中堀さんのこと、藤代くんのこと、実家の問題。




色々考えなくてはいけないことは沢山あるというのに、そのどれにも手を付けることのできないまま、気付けば4月になってしまった。




だからといって、仕事を休んだりしたら、生活できなくなってしまう。
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