詐欺師の恋

「…ふーん、そっか。それは結構ハマってる感じだし、危険だよね?…俺もトモダチとして、零を助けてやりたいし。」




そこまで言うと、俺は煙を吐き出して、視線をルナのネオンに向ける。




「―勿論、それから抜け出す為には、零に痛い思いをしてもらわないといけないんだけどね。」




空生は、本当はすごく弱いから。




「その子にも、少し…頑張ってもらう必要がある方法なんだけど。とりあえず聞いて、できそうだったらやってみればいいし、無理だって思うならやらなくてもいい。でも覚えておいて。これ以外に方法はないからね。」




ずっと、自分のことを責め続けているから。




母親が死んだのも。



義理の父親のことも。



周りが辛い思いをするのも。


母親の復讐として他人を騙すのも。



全部、全部。



自分のせいだ、と。



思い込んだまま、抜け出せないでいる。



空生の傷は、広がっていくばかり。



だから。



簡単なんだ。



その傷口を、もう少し、深くしてあげれば。




そう、『彼女』も、自分のせいで傷ついてしまう。


自分に関わると、皆傷付いてしまう。



どうせ、幸せになんかできないという事実を、突きつけてやるだけで。


思い出させてあげるだけで。



それだけで。



空生は簡単に、自分を殺すだろうね。



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