詐欺師の恋
どこかに隠れていた、冬の名残なのか。


南風に代わって、小さな北風が入り込む。




「これから、燈真と会う約束をしてるの?」



「っ…」



藤代くんが息を呑んだ音がした。



「カノンちゃんと接触して、どうするつもりだったの?カノンちゃんを零から引き離すだけだったら、もう十分だよね?なのにどうして、まだ燈真と会う必要があるの?」




「それは…」





言いながら、タカは藤代くんに近づいていく。




「燈真はカノンちゃんを連れてくるようにあんたに指示したんじゃないの?そこに連れて行って、カノンちゃんを、どうするつもりだったの?」




言葉を失くした藤代くんを睨みつけるようにして、タカが対峙した。



背の高さは同じくらいで。



私はその二人を前にして、内容を理解できない自分の馬鹿な脳みそを呪った。





「燈真がカノンちゃんのことをどう思ってるかわかってて、やってるの?カノンちゃんのこと、本当に好きだったら、できない筈なんだけど。」




瞬間、タカが藤代くんの胸倉を掴んだ。



「答えろっつってんだよ!!!」



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