詐欺師の恋
歩道橋に着くと、私は最後の力を振り絞って、階段を上る。
カンカンカンカン!
よく考えてみると、私はこの歩道橋を使ったことがなくて。
初めて上るんだと気付く。
走り過ぎのせいで激しい動悸と、緊張のせいで苦しい胸。
二つ合わせると、最高にしんどい。
酸素不足なのは承知だけど、どうしても言いたい。
「も、う…二度とやらないっ…かも、、」
階段を駆け上がる、なんて。
よろよろと辿り着いた、歩道橋の上。
「あれ??」
そこには誰も居なくて。
「あれれー???タカの嘘吐きー!」
きょろきょろと左右を確認しながら、地団駄を踏む。
「ちょっと、ちょっとー…」
極度の緊張状態から脱力して、ちょうど歩道橋の真ん中で、手摺に寄りかかった。眼下では車が、ビュンビュンと走って行く。
「なんなのよー、、、もー…」
大きくがっかりの溜め息を吐きながら、今自分が走って来たのとは反対側の通りに目が行った所で。
私の動きは停止した。
―あ。
向こうから走ってくる、人影が。
その、髪が。
きらり、と。
光ったから。