詐欺師の恋
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それから二日後の夕方。





「遅くなってごめん。」




藤代くんが、大きな果物バスケットを抱えて、病室に訪ねてきてくれた。




「いや…ていうか、どこに置けばいいの、それ。」




「一応、総務の皆から、なんだけどね。」




藤代くんも苦笑いだ。




「藤代くんはもう課が変わったんだし、忙しいんだから、憲子にでも頼めば良いのに。」





呆れ顔で言うと、藤代くんは渋い顔をした。





「その篠田から早く行けってせっつかれたんだよ。元々行くつもりだったけどさ。」




とりあえず、パイプ椅子を出してもらい、その上に置いてもらうことになった。




入院なんて初めてしたから、わからなかったけど。



剥いていくれる人がいないと、果物って面倒よね。



直ぐ悪くなっちゃうし。



ていうか、こんなに食べれないし。



もらうだけもらっておきながら、心の中ではこんなこと考えてるんだから、私も誰かのお見舞いに行く機会があったら、気をつけようっと。

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