詐欺師の恋
「別に頑固っていうわけじゃ…」
膨れる私の頬や、腕に貼られた湿布に、藤代くんは無言で痛そうな視線を送ってくる。
やがて一通り辿り終えると、私の視線と再び重なった。
「…ごめん。」
「え?」
ぽつり、呟く藤代くんに、私は虚を衝かれた。
「俺、、、本当に馬鹿なこと…、、守るって言っときながら、結局傷つけて…」
「…良いの。」
項垂れて明らかに気落ちし、また自責の念に駆られている藤代くんを、私は笑って許す。
「櫻田…」
私の言葉に勢い良く頭を上げた藤代くんの顔は、切なさを引き連れている。
そして。
「俺…あの夜、、飯山先輩に、言われたんだ…」
ぽつぽつと躊躇いがちに、話し出す。
「『俺を騙した仕返し』って。」
聞きながら、すれ違い様に何か言われていた言葉はこれのことだったのかと、思った。
飯山、性格悪。
あいつ、次会ったら蹴飛ばしてやろうかしら。