詐欺師の恋

なのに。



私がこんなに叫んでも。




中堀さんは振り返ることなく。



返事なんて、皆無なままで。




また、一歩、歩き出す。






「ま、待って!まだっ、まだっ、あるんですっ!!伝えたいことが!!!」







私は慌てて、呼び止める。





「傍に居る時よりも!空生が居ない方が、私にはよっぽど苦しいってことをっ!!知っててください!!」





これは、私からのメッセージで。





「あと!!!!お養父さんからの伝言預かりました!!!」






今度は、もう居ない中堀さんからの、メッセージ。






「『私が、』!『君に逢って』!!!!」





いいながら、いつしか私の目尻には涙が溜まっていく。




―『もしも、櫻田さえ良かったら、伝えて欲しいんだ。…俺さ、前にあいつの父親に会ったことあるんだよね。』





さっき藤代くんから聞いた話は。




―『妹が死んだ直後に手がかり探しついでに、力いっぱい責めて罵ってやろうと思って会いに行ったんだけど、会って拍子抜けしたよ。』




多分一番伝わって欲しい時の為に、遠回りして届いた、メッセージ。






―『見るからに人の良さそうな人でさ。…俺には憎くてどうしようもないけど、あいつのことを大事そうに話す家族が居る。妹に、俺が居たように。…俺が、あの時、あいつに復讐するのを止めて、忘れようとできたのは、あいつの父親のおかげだよ。俺のこと、友達か何かかと勘違いしたらしくてね、伝言を頼まれて…』


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