詐欺師の恋
ルナに、燈真が不在だったあの日。
さっきまで隣に居たのに忽然と姿を消した、崇からの連絡を受けて。
面倒だと思いつつも、急いでルナを出たあの夜。
言われた通り、いつもの歩道橋まで足を走らせた俺の目に飛び込んで来たのは。
何故か、櫻田花音、で。
息を呑んだのも束の間。
視線が絡んだのも一瞬。
「花音!!!!」
彼女の身体が、ぐらりと傾いて。
間に合う筈はないのに。
身体が、飛ぶように動いた。
自分に科した罰も。
全部頭からとっぱらわれてしまって。
ほぼ、無意識に。
彼女の名前を呼んでしまった。
もう二度と呼ばないと心に決めていたのに。
背筋が冷やりとして。
嫌だ、と思った。
あんたが、居なくなるのだけは、嫌だって。