詐欺師の恋












「―あーあ、バレたらもう来れないな…」





ただただ、地面に落ちる自分の影を見つめ。



一人言ちた。





渡したバラの数は、14本。


あと6日すれば、26本揃ったのに。





「やっぱ、柄じゃないことは、するもんじゃない」





いつか聞いた、彼女の生まれた日。




その日まで、通ったら。




それで、さよなら。





そのつもりだったのに。





頭の中が、こんがらがっていて。



花音が言った言葉に、動揺が隠せない。









「泣きそうな面、してんじゃねぇよ。」






病院の裏門を出ると、崇が気怠い顔をしながら、また車に寄っかかっていた。






「…なんで、お前、いんだよ。」




顔を背けて、内心うんざりした。



正直今崇の相手をする心の状況じゃない。





「どーすんの、カノンちゃんにあんなこと言わせて。」




鈍感な崇は容赦なく直球。




「聞いてたのかよ。悪趣味だな。」




「ばっ、ちげーよ!あれだけでかい声で叫んでれば、大体の人間は聞こえてるわ!」




話題を逸らせば、いつも通りの崇が垣間見れる。





「俺、お前とはダチだと思ってるから。」




直ぐにコホン、とワザとらしく咳払いすると、崇は真剣な顔に戻った。



< 501 / 526 >

この作品をシェア

pagetop