詐欺師の恋
「―あーあ、バレたらもう来れないな…」
ただただ、地面に落ちる自分の影を見つめ。
一人言ちた。
渡したバラの数は、14本。
あと6日すれば、26本揃ったのに。
「やっぱ、柄じゃないことは、するもんじゃない」
いつか聞いた、彼女の生まれた日。
その日まで、通ったら。
それで、さよなら。
そのつもりだったのに。
頭の中が、こんがらがっていて。
花音が言った言葉に、動揺が隠せない。
「泣きそうな面、してんじゃねぇよ。」
病院の裏門を出ると、崇が気怠い顔をしながら、また車に寄っかかっていた。
「…なんで、お前、いんだよ。」
顔を背けて、内心うんざりした。
正直今崇の相手をする心の状況じゃない。
「どーすんの、カノンちゃんにあんなこと言わせて。」
鈍感な崇は容赦なく直球。
「聞いてたのかよ。悪趣味だな。」
「ばっ、ちげーよ!あれだけでかい声で叫んでれば、大体の人間は聞こえてるわ!」
話題を逸らせば、いつも通りの崇が垣間見れる。
「俺、お前とはダチだと思ってるから。」
直ぐにコホン、とワザとらしく咳払いすると、崇は真剣な顔に戻った。