詐欺師の恋
新緑の季節。
行楽日和のこんな週末は、電車の中でも和やかな雰囲気が漂う家族連れが目立つ。
私ひとり。
置いてけぼりを食ったかのような、空しさ。
そして、すごく嫌な感じ。
つまり、憂鬱。
端っこのすかすかな車両に乗り、空いている座席に座ることもせず、扉脇の手摺に寄りかかって、流れる景色を空っぽな気持ちで見つめた。
何にも考えなければ、何も思わずに済む。
そう自分に言い聞かせてきた。
でも、今日は。
今からは。
ちょっとだけ、考えなくちゃいけない。
「昼からだとちょっと変な感じ。」
定期を使って会社の最寄りの駅で降りると、会社とは反対側の道を行った。
夜になると、ぴかぴかと光る繁華街は、今、静まり返っている。
ゴミなどが散らばっている道路は、どこかしら、現実感を漂わせているような気がした。
―やばい、緊張してきたな。
去年の冬から足が遠退いていた看板を目の前にして、私はごくりと唾を飲み込む。
灯りの消えたネオン。
押しても開くことのないNotte di Lunaの重たい扉を。
ぎゅっと握った手でノックした。
行楽日和のこんな週末は、電車の中でも和やかな雰囲気が漂う家族連れが目立つ。
私ひとり。
置いてけぼりを食ったかのような、空しさ。
そして、すごく嫌な感じ。
つまり、憂鬱。
端っこのすかすかな車両に乗り、空いている座席に座ることもせず、扉脇の手摺に寄りかかって、流れる景色を空っぽな気持ちで見つめた。
何にも考えなければ、何も思わずに済む。
そう自分に言い聞かせてきた。
でも、今日は。
今からは。
ちょっとだけ、考えなくちゃいけない。
「昼からだとちょっと変な感じ。」
定期を使って会社の最寄りの駅で降りると、会社とは反対側の道を行った。
夜になると、ぴかぴかと光る繁華街は、今、静まり返っている。
ゴミなどが散らばっている道路は、どこかしら、現実感を漂わせているような気がした。
―やばい、緊張してきたな。
去年の冬から足が遠退いていた看板を目の前にして、私はごくりと唾を飲み込む。
灯りの消えたネオン。
押しても開くことのないNotte di Lunaの重たい扉を。
ぎゅっと握った手でノックした。