詐欺師の恋
嘘だ。
私は、首を小さくふるふると横に振った。
「俺の、最後のターゲットは、花音。」
二人だけになった空間で、中堀さんの言葉遣いが、空生のものに変わる。
「欲しいのは―」
さっきから、逸らされることもなく、逸らすこともできない視線が、絡まって―
「花音自身。」
絡めとられそうになる。
ああ、嫌だ。
なんで。
「…うっ、、嘘…だぁ…」
わかっていながら、涙が零れるの。
どうして大粒なの。
「なっ、に…言っ、てるの??」
本当は、嘘でしょうと笑い飛ばしてやりたい。
なのに。
どうして、期待するの。
「もしも、まだ間に合うんだったら―」
中堀さんは、そんな私を切なそうな目で見つめて。
「…俺の傍に居て。」
その、長い指をそっと伸ばして。
「今言った事に―」
私の頬を伝う涙を掬い取る。
「嘘はもう、ないよ。」