詐欺師の恋
声が出ない。
涙が。
ぼろぼろぼろぼろ。
後から後から零れてきて。
顔、ぐしゃぐしゃ。
だってね、閉じ込めて、押し込めていた想いが、溢れ出すようで。
だってね。
会いたかった。
本当は、ずっと会いたかった。
諦められるなんて自信はどこにもなかった。
貴方への想いを終えることなんてできるわけないこと、頭では理解してた。
気付かないフリが、上手になったから。
そのまま、いつか、忘れられたら。
そう思ってたけど。
本当は。
もしも叶うなら。
もう一度。
ちゃんと、好きだって。
言って欲しかった。
ずっと傍に居たかった。
まさか、現実になるなんて。
もしかして、これは。
「…夢―?」
しゃくりあげながら、訊ねると。
「残念ながら―」
中堀さんが立ち上がって、眼鏡を外し、ネクタイを緩めた。