詐欺師の恋
「はい!終わりました。今から帰るところですっ」
仕事でクタクタな所に、中堀さんからの電話なんて。
あー、もう、嬉しい。
嬉しすぎる。
《そう…、あのさ…明日―こっちに来ない?》
「―え!?」
突然のお誘いに、私の目がくわっと見開かれる。
《五月蝿いよ。耳、痛い。》
不機嫌な声でも、構わない。
「明日って明日って、明日ですか?!え、えっと、えっと、何なら今夜からでも!!!」
《今夜は迎えに行ってあげられないから…》
「迎えなんていらないですよっ」
《危ないでしょ。俺は家に居ないから。》
そういえば、中堀さんの仕事はこれからだった。
あー、でも、会いたいな。
「じゃ、クラブに行きます…」
《何言ってんの》
呆れたように笑う中堀さん。
「お、お願いしますっ。」
これでも必死なんです、私。