詐欺師の恋
「中堀さーん…」




途方に暮れた私は、中堀さんの意識を取り戻させ、少し自分で歩いてもらえるようにしようと考えた。



本当は起こしちゃうとかわいそうだけど、このままだと薬も水も飲めないし。



あ、そーだ。水!



中堀さんをその場に残し、私は小走りにキッチンへ向かった。



冷蔵庫の中を見て、あれ。と思う。



同時に玄関で、ガタ、と音がして私ははっとし、いつも通り整列しているミネラルウォーターのボトルをひとつ、ガシリと掴んで玄関に戻る。






「中堀さん?」




見ると、中堀さんが身体を支えるようにして床に手を付き、虚ろな目で宙を見ていた。




チャンスだ!






「歩けますか?ソファまででいいので。」





傍に駆け寄って、肩を担ぐようにして立ち上がらせようとすると、中堀さんがふらふらながらも、力をいれてくれたのがわかった。





そんなこんなで、なんとかソファまで行くと、中堀さんを横にならせる。



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