詐欺師の恋
「あ、水、飲まないと…あと、薬も…」



薬、ないけど。


とりあえず水分だけ取らせて、後でコンビニに買いに行くか。



私は一旦横にならせてしまった中堀さんの背中を支え、片手に持っていたペットボトルの蓋を開けて渡した。



ぼんやりしているものの、中堀さんはそれをしっかりと受け取って口に運ぶ。



コクンコクンと中堀さんの喉が動いて、水が流れていくのを確認すると、少し安心した。



半分ほど飲んだ所で、中堀さんがペットボトルを差し出したので、受け取って蓋をする。





「じゃ、ちょっと横になっててください。毛布取ってきます。」




テーブルにそれを置き、素早く暖房を入れて、二階に行くために立ち上がろうとすると、突然手首を掴まれた。




「え?」




上半身起こしたまま、中堀さんが私の手首を掴んでいる。



私は床に膝立ちの状態で突然の出来事を上手く処理できないでいた。




「中堀…さん?」



熱で湿っている瞳は、私がちゃんと見えているのかいないのか。



落ち着いていたバイタルがここにきて跳ね上がる。


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