詐欺師の恋
「もう少し…ここに、居て…」
小さく零れた言葉は、目の前の中堀さんを、ひどく幼く見せた。
私が中堀さんを見つめたまま何も言えずに居ると、手首を掴んでいた熱い手が放され、ゆっくりと私の前髪に触れる。
ふわりとした感触に、髪を掬われたのだとわかる。
―な、何をするんだろう。
頭が真っ白になりそう。
息の仕方を忘れた私をよそに、中堀さんは、その手をそっと脇にずらすと、少し身体を屈ませた。
そして。
露わになった私の額に。
しっとりと。
中堀さんの唇が、触れる。
髪を分けていた中堀さんの。
指の背がゆっくりと下がって。
私の輪郭を確かめるようになぞっていく。
そして。
「っ」
最後に、私の唇を親指の腹で、そっと拭うように線を引いた。
「~~~~~~!!!」
もうだめ。
これ以上じっとしていられないよ。
心臓が口から出そう。