あの月の夜、きみと。
『失礼しましたー』


並んで職員室を出る。

隣のクラスだから方向は一緒。
職員室からクラスまではそう遠くない。

でも沈黙が続くのはなんだか気まずい。
話しかけるべきか?
待つべきか?





『、、、ねぇ、ピザ屋さん、って何?』


松岡くんが口を開いた。


『あ、松岡くん、
ピザ屋さんでバイトしてない?
夏休み、うちのお隣さんに松岡くん
が配達してるとこ偶然見かけて、、、』

『え?!まじ?!』

『うん、おっきな声が聞こえて、
思わず見たら松岡くんだった。』

『、、てか、なんで俺の名前知ってんの?』

『えぇ?!
だって、松岡くんうちのクラスの男子と
仲いいじゃん。よくクラスくるし。』

『あーそっかそっか。いーちゃんとか、
もっちーとかな。』

『そうそう。よくくるから、名前も自然と
耳に入ってくるってゆうか、
気づいたら覚えてた、みたいな。』

『そーねー、あいつらと集まると
ついつい盛り上がっちゃうからねー』

『いつもなんの話してるの?』

『だいたいサッカーのこと!あとはたまに
大貧民やったり、漫画の話とか?』

『すごい笑ってるよね、楽しそうだなーって
思いながら見てるよ』

『や、人様のクラスでうるさくして
ごめんね?』

『え、うるさいなんて思ったことないよ??』

『そぉ?』

『うん。むしろいーちゃんのがうるさい。』

『ふーん、、そっか。』



いつの間にかクラスの前にきていた。

『うー、、、遅れて入るの緊張する、、』

『えーそうかぁ?』

『あのみんなの視線が一斉に集まる感じが
、、、』

『あぁ、確かに。
でも俺はもう遅刻しすぎて誰も注目して
くれなくなったよ。
またお前か、みたいな空気もないのよ?
それはそれで寂しいよ?』

『ぷっ、、、』

『いや、笑い事じゃないから!』

『ふふふ、、、
松岡くんのおかげで少し緊張がほぐれた、
ありがとねっ』

『、、、』

『よし、入るぞ〜っ』


気合を入れて扉に手をかけた瞬間。


『名前!』

『、、、え?』

『名前は?』

『町田、、楓、、、。』

『おっけー、町田ね!』

にかっと笑ってそう言うと、松岡くんは
さっさと扉を開けて教室へと消えていった。








心臓が、ばくばくする。
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