今日から俺の妹な。
「もう、いいから。頭なんて下げないで。俺の方が…」



しばらくして声が落ちてきて見上げたら、そこにはいつも通りの香山玲先輩



がいて。



さっきの別人のような人が、この人だったとは、やはり思えなかった。



柔らかな空気に包まれながら、ミルクブラウンの髪を揺らしている。



…さっき、先輩が言いかけた言葉、なんだったんだろう。



「さあ、帰ろ」



「あ、はい」



動き出した思考は、労力を足に注ぐため停止してしまった。



まぁ、いっか。




―このとき考えていたって、行き着く先は変わりはしないのだろうから。
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