Baby boo!
「……一応聞くけど、そのお父さんの名前は?」
「ショージパパですけど……?」
「フルネームで!」
「そんなに怒らなくても……、パパの名前は永崎祥二です」
「まさか、嘘だろ……?」
……永崎祥二は間違いなく俺の父親の名前だ。いよいよ、本当にこいつが俺の妹だということが確信めいてきた。
「もしかして先生がお兄さんなんですか!?」
「……信じたくないけどな」
顔色を変えた俺に、状況を察した奴はそれはそれは嬉しそうにはしゃいでいた。
俺の気も知らずに。
しかし、ここでしのごの言っていても仕方が無い。とりあえず、近くのカフェに入ることに。
席へ着くなり、親父から事情を問い質すべくすぐさま携帯へ連絡する。
……昔から一箇所にはとどまってはいられない人間だ。おそらくまたどこか遠い地方をほっつき歩いてるのだろう。
最悪、海外ってのも考えられる。
その間やってきた店員に奴が対応していた。
「えっと、キャラメルブラウニーホワイトチョコレーフラペチーノを2つ、クリーム多めでお願いします」
その名前を聞いただけで甘ったるそうな飲み物を俺の分まで頼まれて、思わずぎょっとする。
一瞬携帯を耳元から離し即座にいいなおす。
「すいませんそれ1つで、あとブラック1つ」
すると、かしこまりました、と頭を下げ去っていく店員。
「なんでー?あれおいしいのに」
そう言いながら、口元をきゅっと結んで突き出しぶーぶー文句を垂れる。
「ちょっと、黙ってろ」
そんな悠長にはしていられず、一喝して奴を黙らせた。
しばらく、耳元で発信音が空しく鳴り続けている。
……出ないか。
一向に出る気配がない。
諦めて切ろうとした瞬間、電話口で無駄に明るいあいつの声がした。