Baby boo!


そして一番困っていたのが、夜のハムスターの騒音だった。

そうあのカラカラだ。
あのカラカラに俺は頭を悩ませていた。

部屋も離れているし、わりかし小さな音だ。
しかし、気になり始まると止まらない。

元々、寝室の時計には秒針の音さえも許せないタチ。
わずかな音でも気になったら眠れなくなってしまうのだ。


遠くからかすかに、だけど確かに聞こえる、からから……からから……とハムスターが車輪を駆ける音。
あぁ、ハムスターは夜行性なんだからしょうがない。

そう言って自分に言い聞かせようとしたがダメだった。

悪いな、ハムスター。
お前に罪はないんだ。

だけど人間はな、夜眠る生き物なんだよ……っ
てか、明日も仕事だし寝なきゃなんねぇんだっ。

それは0時を回った深夜のこと、俺は奴の部屋を蹴破るような勢いで突入していった。


「彰人さん……っ!?」

「毎晩、毎晩、うるせぇんだよっ」

そう言ってハムスターカゴに触れようとする。
すると、仁菜は血相を変えて俺の腕にすがりついてきた。

「あぁ、やめてっ、その子には手をあげないでっ!」

「うるせぇっ」

「お願いですから、どうかその子には、その子にだけはっ」

そう言って懇願する仁菜に暴言を吐く俺。
容赦なくハムスターのカゴの中に手を突っ込むと、俺はそこから無慈悲に車輪を外して没収する。
すると奴は、いやーっと悲鳴をあげた。

……なんだこれ。
間違いなく、被害者は俺だよな……?

まるで子どもにDVをふるう夫の図になってないか。

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